海外旅行先で妙な日本語POPや案内を見かけることは少なくありませんが、逆に日本で見かける妙な中国語や英語の案内や注意書きも、(最近はやや落ち着きつつあるものの)インバウンド需要によって急増しています。
英語は”一応”義務教育でも学ぶためか、壊滅的に酷いものはそこまで見かけませんが、中国語に関しては大学で専攻や科目選択でもしない限り触れる機会すらまずないので、意味すら伝わるのか怪しい漢字の文章がそこかしこで氾濫しています。
しかし、案内文や注意書きを書くだけなのに駅前留学すらやってられないというのが実状でしょう。
というわけで、本ページでは案内文や注意書きを書くのに必要なレベルの「手法」を説明していきます。
手法なので、応用すれば中国語以外にも応用可能だと思います。
なお、本ページを利用するにあたっては最低限以下の能力などが必要となります。
- 中学1年生程度の英語レベル(外国語知識という意味で)
- 検索サイトを使いこなせるリテラシー
- 外国語に拒否反応を示さない
ちなみに英語に関しては機械翻訳などで何とかなると思うので本ページでは扱いません。
同様に日本語←→韓国語についても、案内・注意書き程度あれば機械翻訳レベルでも意味が伝わる程度の精度は得られるので扱いません。
実践
今回は日本人に馴染みのない簡体字ではなく、見覚えがある字体が多い繁体字を用いて説明を進めていきます。
簡体字で表記したい場合はGoogle翻訳の言語選択を「中国語」→「中国語(簡体)」で字体を変換してください。
厳密には繁体字言語圏と簡体字圏では言い回しが異なることはありますが、少なくとも意味は伝わるでしょう。
ちなみに簡体字は中国本土やマレーシア・シンガポール、繁体字は台湾・香港・マカオで用いられています。
例文:他のお客様のご迷惑となりますので、大きな声での会話はお控えください。
原文の時点で既に回りくどい文章ですが、日本ではよく見る注意書きです。とりあえずこれをGoogle翻訳に放り込んでみましょう。
素人目に見てもかなり怪しい文字列が生成されました。
中国語→日本語で再翻訳してみましょう。
翻訳精度自体がアレなのもありますが、もはや意味不明です。
察しがいい人なら辛うじて感じ取ってくれるかもしませんが、ソーシャルネット上に晒され笑いものにされても仕方がないクオリティです。
ここから最低限意味が通じそうなクオリティまで修正します
1.原文から考え直す
この回りくどい言い回し自体が翻訳に適していないので、翻訳する文章を考えるところから始めます。
まず「他のお客様のご迷惑となりますので」の部分はそもそも不要です。
中国語圏の案内や注意文では他人に迷惑がかかる~といった言い回しはまず使いません。
単刀直入に「○○しないでください」「○○をやってください」といった感じです。
以上を踏まえると、「大声での会話はやめてください」あたりになるでしょうか。
2.機械翻訳からの修正
では考え直した日本語文章を機械翻訳にかけてみましょう。
再翻訳した結果
だいぶマシにはなりましたが、まだ違和感が強いです。
まず単語ごとにばらしてみましょう。
意味は
中国語辞書 - Weblio日中中日辞典
を利用すると便利です。
固有名詞は日本語版Wikipediaから中国語版へのリンクを辿った方が楽かもしれません。
- 請・・・~して下さい(人に物事を頼むとき)
- 停止・・・(動作や行為)が止まる
- 談話・・・(面と向かって)話す、会話による交流
- 大聲・・・大きな声
こうしてみると「停止」という単語が違和感の原因だということが解かります。
これを「~するな」という意味の「勿」に差し替えてみます。
「請勿~」で「~しないでください」という意味になります。
ちなみに「請勿○○」は中国語圏の注意書きではよく目にする言い回しです。
「禁止○○」という表現もありますが、こちらは警告に近い厳しいニュアンスになるため使いどころには注意しましょう。
かなりいい感じになってきました。
それでは仕上げといきましょう。
3.ググってさらに微修正
注意書きの言い回しに関してはネット上に転がっているので、確認のためググってみます。
中国語のサイトが引っかかればとりあえず意味くらいは伝わる文章と考えて良いでしょう。
特に注目するのはページ下部のこの辺り。
台湾の図書館や宿泊施設と思わしき注意書きが引っかかりました。
このことから「談話大聲」の部分は「大聲談話」として使われていることが分かります。
まあ、どちらでも問題ないような気もしますが。
というわけで「大声での会話はやめてください」は「請勿大聲談話」(簡体字:请勿大声谈话)になりました。
流石に完璧な中国語とまではいかないでしょうが、少なくとも笑いものになることはないでしょう。
ちなみにこのググり方を応用すれば、翻訳の手間が省ける…かもしれません。
表現上の注意点
中国人だけを対象にした施設であれば話は別ですが、特に大陸の人間は非常にプライドが高い傾向にあるため簡体字中国語の注意だけを掲示すると嫌悪感を与える恐れがあります。
中国本土では政府発表の情報や新聞メディア等の信用は地に落ちているため、口コミを情報源として利用するユーザーが多く、ネガティブなレビューは瞬く間に広がります。
そもそも案内文ならともかく、注意書きは掲示されていて気持ちの良いものではないので、中国語に限らず外国語だけを表記するということは「外国人に物申す」的なニュアンスでとらえられても仕方ありません。
そのため中国人向けの案内であっても日本語・英語・中国語の3か国語は必ず併記、スペースが許すのであれば韓国語あたりも併記しておけばマイナスの感情を持たれることはまずなくなるでしょう。
繁体字と簡体字についてはターゲット層に応じて使い分け、スペースがあるならば両方表記しておくのが良いでしょう。
どうしても手間を省きたい人向け
しかし、このやり方でも面倒ですし、ある程度の情報リテラシが要求されます。
そこで「外国人は英語が読める」という勝手な前提を設けて、日本語と英語表記にイラストやピクトグラムを組み合わせるという非常に意識の低い手法があります。
イラストやピクトグラムを調達する手間とコストはかかりますが、語学力はほぼ必要ありません。
以下は案内利用程度であれば無承諾で利用可能なピクトグラム(的なイラスト)が配信されています。
標準案内用図記号:交通エコロジー・モビリティ財団
http://www.ecomo.or.jp/barrierfree/pictogram/picto_jis.html
human pictogram 2.0 (無料人物 ピクトグラム素材 2.0)
http://pictogram2.com/
いらすとや
http://www.irasutoya.com
※イラスト単独では外国人に意味が伝わりにくい素材も非常に多いので良く考えて利用しましょう
イラストに関してはフリー素材が色々とありますが、商店での案内利用は営利目的の利用にあたるか微妙なラインなので、トラブルを避けるのでならば非商用利用を強調しているところのものは使わない方が無難です。
ちなみに中国人の英語能力ですが、個人手配で来る層は一定以上の所得はある(≒学歴がある)と考えられるので一般的な日本人相当の英語力はあると考えて問題ないでしょう。
ただ、格安ツアーで来るような団体客は英語どころか識字能力すら怪しいレベルの場合もあるので、その辺りは客層を考える必要はあります。そもそも団体客はどの国でも総じてモラルも低い傾向にあるので掲示するだけ無駄になるような気もしますが…
2020/5/5:旅行記ブログ(https://chiyatani.net/zh_translate/)から移転
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